歩き遍路の準備をする際に最も気を付けなければならない問題が靴選びです。歩き遍路では1200kmの道のりを歩きます。日程の目安は40日ということを考えると1日の歩行距離は30kmとなります。
そのため、靴のサイズ、重量、防水性など普段の使用では小さな問題となることが、長期間のお遍路では大きな問題となって現れてきます。間違った靴を履いてお遍路を続けると足腰を痛めてしまいます。
長距離のウォーキングをやったことがない人は間違った靴を購入する可能性があります。お遍路中に靴屋さんを見つけることは難しいので、最初にいい靴を選ばなければなりません。
お遍路をするための靴として次の種類の靴で考える人が多いと思います。先に結論から言うと、お遍路にはウォーキングシューズが最適です。その理由をそれぞれの靴の特徴とともに説明します。
・登山靴
・ランニングシューズ
・ウォーキングシューズ
靴屋に行ってもこれらの靴の違いが分からず、見た目で買ってしまう恐れもあるので、それぞれの靴の特徴を理解してから買って下さい。

登山靴の特徴

登山靴は文字通り登山のために設計された靴です。そのため、転倒しないように靴底は滑りにくい構造、転倒してもダメージを軽減するために足をカバーする構造が特徴です。
歩き遍路では「遍路道」と呼ばれる昔からお遍路さんが歩いた道をたどるルートが人気です。このルートでは「遍路ころがし」と名付けられた急な山道もあります。しかし、遍路道の80~90%はアスファルトで舗装された道になっています
登山靴は平たんで硬いアスファルトの道を歩くことには不向きです。なぜなら、アスファルトの道を歩く際は転倒のリスクが小さく登山靴の機能が無駄になってしまうからです。お遍路で登山靴を履いていると、靴の重量による負担が予想されます。
また、登山靴には防水性を重視したものもあります。しかし、防水性が高いということは内側の湿気も逃げにくいということになります。靴に湿気がこもると、皮膚の摩擦力が大きくなりマメができやすくなってしまいます。
つまり、お遍路では舗装された道路を歩くため、登山靴の機能は必要ないということになります。

ランニングシューズの特徴

ランニングシューズは文字通りマラソンなど走るために設計された靴です。そのため、足を速く回転できるように軽量でクッション性も大きく設計されています
歩き遍路では如何に足への負担を減らせるかということが課題となります。荷物や靴は軽ければ軽いほど足への負担は減るので長距離の歩行には軽い靴がおススメです。中でもランニングシューズは様々ある靴の中で最も軽い種類の靴です。
しかし、軽量化を重視するランニングシューズはランニングに不要な要素はなるべく排除しています。人間は走る際にかかとは地面と接地しないので、ランニングシューズはかかとのクッション性が低くつま先のクッション性が高くなっています。
歩き遍路にはランニングシューズはやや不向きです。ランニングシューズで長時間歩行を続けると、かかとに大きな負担がかかり、股関節にも響くためです。
ただし、最近のランニングシューズは軽くてクッション性の高い新素材を使うなどして機能が充実してきました。そのため、性能の良いランニングシューズなら問題なくウォーキング用としてお遍路をすることができます

ウォーキングシューズの特徴

ウォーキングシューズは文字通り歩くために設計された靴です。そのため、平たんな道で安定して歩けるように設計されています。
ウォーキングの際は足を速く回転する必要がないため、ウォーキングシューズはランニングシューズよりやや重くなっています。ただし、この重みにより足の振り子運動がスムーズに行えるので足を前に出すエネルギーを節約することができます。
また、かかとのクッション性が重視されているため、股関節や腰へのダメージを軽減することができます。歩き遍路では荷物を背負って歩くため足への負担が大きくなります。そのためかかとのクッション性は重要な問題です。
ウォーキングシューズはウォーキングのために設計されているため、これが歩き遍路に最適だということは当然です。

お遍路用の靴を購入する時の注意点

 
靴を買う際は必ずお店に行って試着してから購入しましょう。足の大きさや形は人それぞれなのでサイズ感や重量を自分で確認して選ばなければなりません。
また、安い靴を選ぶと失敗しやすくなります。基本的に性能の良い靴は高価なので安い靴を履くとお遍路中に支障が現れるかもしれません。1200kmも歩けば必ず元は取れます。
靴は見た目では性能まで見分けることはできません。また、ウォーキングシューズにもバリエーションがあります。そのため、店員さんにお遍路に適した靴についてアドバイスをもらいましょう。
店員さんはお遍路を知らないかもしれないので、「遍路道はほとんどアスファルトで毎日30km歩く」という情報を教えましょう。お遍路は登山だというイメージがあればゴリゴリの登山靴を薦められるかもしれませんから。