「今日中に次の寺まで進みたい」
「休憩していては予約した宿に間に合わない」
はじめてお遍路をする人に多い事ですが、先を急ぎすぎることがあります。自分で決めた予定を守らなければならないと感じてしまうため、ついつい早足になってしまうのです。
歩き遍路では四国の山間の人がいないような場所を歩かなければならないため、焦りや不安といった感情が原因となっているのかもしれません。見知らぬ土地を歩くということはそれだけ負担がかかります。
「体力には自信があるから今日は40km歩こう」
「多少無理しても大丈夫だろう」
また、歩き遍路に挑戦する方は体力に自信がある方が多いです。そのため、ついつい体を酷使してしまうことがあります。歩き遍路は長期間にわたる旅です。一時的に無理できたとしても必ず、体力の限界を超えてしまうとギブアップにつながります
急がば回れ
歩き遍路中に先を急ぎすぎるあまり、体調を壊すお遍路さんも多くいます。私が歩き遍路をしている期間にも、途中で歩けなくなったお遍路さんに何度も会いました。
多くのお遍路さんは、歩き遍路では毎日30kmほど歩きます。体力に自信がある人でも長距離を毎日歩く経験は少ないため、体調管理が難しいです
そのため、途中で体力の限界に達し、病院に行ったり、ギブアップして帰宅したりする状況に陥ってしまいます。計画や体調管理を誤ると次のようなトラブルが考えられます。
・足にマメができる
・足のマメが潰れる
・足が上がらなくなる
・熱中症
・日没後の歩行
無理をするとこのようなトラブルの原因になります。お遍路では無理をして頑張ってもよい方向につながることは少ないことを覚えておきましょう。「急がば回れ」です。少しでも体力に不安が出たら、連泊を考え休息日を作るとよいでしょう。歩き遍路には毎日歩かなければならないルールはありません
これは日常生活でも同じことが言えます。睡眠時間を削って勉強や仕事を続けると体調を壊して長期休養が必要になることは目に見えています。
歩き遍路のペース、お遍路は競争ではない
お遍路はマラソンや競歩ではありません。88ヶ所すべての札所を達成することを結願(けちがん)と言いますが、結願が早ければ早いほど良いというものではありません。
何を思ってお遍路を始めたのか、何を考えながらお遍路の道中を進んでいるのかは人それぞれ異なります。つまり、お遍路は自分自身と対話しながら進んでいきます。慌ててトラブルを招くよりも、じっくりと自分と向き合う時間を大切にするべきです。
お遍路の予定の立て方ですが、「今日は○番札所まで行く」、「何キロ歩く」という決め方は間違ってはいませんが、その予定に固執しすぎるとそのことばかりが頭に取り憑いてしまうため道中の楽しみを無視して急ぐ結果となります。そして体調を崩してしまいます。
お遍路の予定を立てるときは柔軟な対応を心がけましょう。時間的、体力的に厳しいと感じたら、その日は宿を変更してゆっくり休んで次の日に再開すればよいのです
また、初日のお遍路は歩行距離を10km程度にし、体力の様子を見るとよいでしょう。区切り打ち初日の場合も同様です。急に体を動かすことで筋肉痛などの不調が出やすくなります。
熱中症予防のためには、暑い季節は歩く時間を減らし、休憩を増やしましょう
そんなにゆっくりしていたら全然進めないじゃないかと思うかもしれません。しかし、無理をして体調を壊し1日動かないより、コツコツと歩いている方が結果的に効率は良くなります。
急ぐなら車で行けばよい
急いでお遍路をしたいならバスや車で行けばよいということになります。徒歩や自転車など、わざわざ時間のかかる方法でお遍路をしているなら時間をかければいいじゃないですか。
これだけ交通網が発達した現代でも歩いているお遍路さんはいます。当然、88番札所にたどり着くまでには相当な時間がかかり、40日程度必要となります。しかし、使った時間の分だけ人との出会いや新たな気づきが増えます
なぜ、歩いてゆっくりとお遍路をしているのかを考えると、なるべく結願を遅くしてお遍路をしている時間を延ばしたいと思っているからだということに気づきます。そこには観光バスや自家用車でのお遍路の旅では味わえない貴重な体験があるからです。
急ぎ足で進むとこのようなお遍路の醍醐味が減ってしまうことにつながります。