お遍路を巡拝するお遍路さんは、各札所で御朱印をもらいます。御朱印のルーツは仏様にお経を供えた証なので、納経(のうきょう)とも言います。御朱印は各札所の納経所で300円を支払うともらうことができます。
納経所の受付は基本的に7:00~17:00です。そのため、18:00に札所を参拝しても御朱印をもらうことができません。実は、この納経所でトラブルが起こることがあります

お遍路ツアーではガイドが御朱印をもらう

全国各地からお遍路バスツアーが企画され、多くのお遍路さんが団体で四国に訪れます。よくある日程では12日間で88ヶ所を巡るケースが多いです。この日程は時間的に厳しく、効率的に巡拝をしなければ計画が破たんしてしまいます。

そこで、お遍路ツアーは効率化をはかるために、ガイドがツアー客の代わりに御朱印をもらうことがあります。ツアー客が本堂や大師堂で読経をしている時間に、ガイドがツアー客の納経帳をまとめて預かり、納経所に持って行きます。

納経所での混雑

お遍路ではよくあることですが、自分が御朱印をもらいたくて納経所に行くと、団体ツアーのガイドが先に並んでおり、御朱印をもらうのに時間がかかることがあります。
30人~40人分の御朱印だけでなく、白衣や掛け軸にも御朱印を希望する方が多いと、さらに時間がかかります。その場合、納経所には列ができ、大混雑します。

それぞれの意見

では、次のような状況を考えてみましょう。16:50、納経所の受付が終わる10分前、個人で参拝したお遍路さんが納経所に行くと、大量の納経帳を抱えたガイドが前に並んでいました。さて、それぞれがどのように考えているのでしょうか?

個人遍路の意見

17:00に間に合わなかったらどうしよう。できれば、団体ツアーのガイドより先に御朱印をもらいたい。一人くらい先に行っても時間は変わらないでしょ?
納経所は人員を増やして御朱印を書くスピードを上げるか、17:00以降も受付を延長してほしい。


ツアーガイドの意見

 

絶対に納経所が閉まる前に御朱印をもらいたい。そうでなければ、参加者30人分の御朱印を別日にもらいに来ることになり、旅行会社として損失が出てしまう。後から並んだ人に順番を譲ると、次に来た人にも譲らなければならない。納経所は人員を増やして御朱印を書くスピードを上げるか、17:00以降も受付を延長してほしい。


札所の意見

お遍路さんたち、もっと早く来てくれよ。人員には限りがあるし、残業はしたくないので17:00ちょうどで受付を終了したい。



トラブル必死、納経所は修羅場さながらです。お遍路さんとツアーガイドとの口論、納経所の強制終了、受付時間の短縮などが問題となることがあります。

例えば、個人お遍路さんが、先に並んでもよいか尋ねたところ、ツアーガイドに断られた上にネチネチと悪口を言われた。ある札所では、まだお遍路さんが数人並んでいるのに、17:00になると納経所の窓を閉められ、御朱印がもらえなかった。などなど。

どこかで折り合いをつけるしかありませんが、そのためには、どうすればいいのでしょう?私にはわからないので弘法大師に聞いてみてください。

バスツアー?受付時間?なにそれ?しらん。

ノウボウ・アキャシャ・ギャラバヤ・オン・アリ・キャマリボリ・ソワカ…



解決策

納経所での混雑、トラブルに巻き込まれたくなければ次のような解決策があります。

  • 余裕を持った計画を立てる
  • 御朱印をもらってから本堂・大師堂でお参りをする。

お遍路は気候が穏やかな春・秋に参拝者が多くなります。特にゴールデンウィーク等の連休が重なると納経所での混雑に遭遇することも多くなります。この時期にお遍路をする場合は余裕を持った計画を立てましょう。

納経所の受付は17:00までですが、本堂や大師堂での参拝は17:00以降でも可能です。そのため、御朱印を先にもらってからお参りをすることも可能です。ただ、御朱印の本来の意味はお参りの証なので、順番が前後します。しかし、それは個人の自由であり、他人から強制される問題ではありません

考え方の転換

その他の解決策として、あなたの考え方を変えることがあります。そのために、一つ例を挙げて説明します。

あなたが道路を運転中、猛スピードで走ってくる車にクラクションを鳴らされ、追い越されました。
危うく事故をするかと思うスピードでした。
あなたはイライラしたので文句を言ってやろうと、その車を追いかけました。
すると、その車は減速し、病院に入っていきました。
中から出てきた運転手は、苦しそうな妊婦さんを連れて病院に入っていきました。
あなたは怒る気を失いました。

もし、猛スピードの車が救急車であれば、あなたはイライラしなかったでしょう。また、猛スピードの車が病人を運んでいるのでは?と想像できればイライラしなかったでしょう。

同じ状況であっても、考え方によって人間は真逆の感情を持つことができます。それはあなたの想像力、思いやり、人格などに起因します。

納経所でも同じように相手を思いやることが重要です。人によって事情が異なるからです。順番を譲っても、そんなに困らない人は譲りましょう。もし相手が納得できるくらい緊迫する状況にあるなら、事情を説明し誠心誠意お願いしましょう。そして断られた場合は、いさぎよく諦めましょう。