お遍路の作法や服装や弘法大師・空海を信仰する人々によって引き継がれ、1200年の歴史を形成しています。お遍路さんの服装は金剛杖、白衣、菅笠が基本スタイルです。特に、菅笠(すげがさ)は歩き遍路には欠かせない道具です。
菅笠はスゲというイネ科植物を編み込んで作られた笠で、1番札所の霊山寺などで販売されています。菅笠をかぶって歩くと直射日光を遮断し、通気性もよいので熱中症対策になります。また、頭上から襲ってくるハチや毛虫を予防します。
菅笠は非常に実用的なお遍路用品ですが、お遍路に関連する意味が込められています。

菅笠に書かれている文字

お遍路さんが使う菅笠には次のような文字が書かれています。
・梵字
・迷故界城
・悟故十方空
・本来無東西
・何処有南北
・同行二人
 
梵字は弘法大師を表す
梵字は密教とともに日本に伝わった文字で古代インドで使用されていました。弘法大師・空海は真言密教の開祖であり梵字との関係が深い人物です。
梵字は1文字で観世音菩薩や虚空蔵菩薩などを表し、菅笠に架かれている文字は「ユ」と発音する文字で弥勒菩薩及び弘法大師を表す梵字です。
つまり、菅笠をかぶってお遍路をすることは弘法大師と一緒に巡礼していることを意味します。菅笠をかぶる際は梵字が前に来るようにかぶります。
 
四つの句が意味するものは
迷故界城
悟故十方空
本来無東西
何処有南北
これは漢詩で江戸時代の禅師が著した「小叢林清規」に記されている文章です。この句は真言宗や禅宗式で葬式を行う際に棺桶の上に吊り下げられる文字として使われていました。現在でも天蓋や骨壺の蓋などにこの句を書く地域も残っています。
本来棺桶の上に書かれる文字をお遍路さんは頭の上にかぶって巡礼しています。また、白衣や金剛杖も死装束です。
これはお遍路の道中で命を落としても成仏できるようにという意味が込められています。また、お遍路さんは死者として巡礼していることも意味します。全ての札所を巡りお遍路衣装を脱ぐことで、この世に再び生まれてくることになります。
句の解釈は次のようなります。
色々と迷っているために三界(欲界、色界、無色界)に閉じ込められている。悟りの境地に来ると、あらゆる方向に何もないことに気づく。方角は人間が決めたもので、元々は東西などなかった。南北も何処にもあるはずがない。
弘法大師と同行二人
お遍路には同行二人(どうぎょうににん)という考え方があります。たとえ一人でお遍路をしていても、すぐ側で弘法大師が見守ってくれているというものです。弘法大師は高野山の奥之院に入定しても、魂は四国で修業を続けていると信じられているためです。
菅笠をかぶるとお遍路さんだと分かる
四国では金剛杖、菅笠、白衣のいずれかを身に付けていると、お遍路さんだと認識されます。お遍路用品は地元の人に対して自分がお遍路さんであることを宣言する役目を果たします。
お遍路さんが慣れない四国に来て頑張っていることを知っています。そのため、道に迷っている様子を見ると道を教えてくれることがあります。
また、お遍路さん同士でも同じ格好をしていれば親近感がわくのでコミュニケーションがとりやすくなります。
つまり、菅笠はお遍路さんの出会いを広げてくれるアイテムだといえます。