四国八十八ヶ所お遍路:37番札所 岩本寺の七不思議

四国にある弘法大師(空海)ゆかりの八十八ヶ所の寺を巡るお遍路には、弘法大師にまつわる伝説が語り継がれています。その中には、只のおとぎ話レベルではなく現代の人間の生き方のヒントとなるようなものが含まれています。
弘法大師は今から約1200年前に四国で修業を行いました。弘法大師が長い年月を経ても信仰されるのは理由があります。大師はカリスマ性やリーダーシップを持ち、人を引き付ける行動を行っているからです。そのため伝説が現在まで語り継がれています。
人間の心理や行動の原則は1000年前も今と変わりません。そのため、日常の悩みを解決するヒントがお遍路に含まれているのです。
実際、お遍路を巡る理由として「自分探し」、「精神の鍛練」といった自己啓発的な理由が多い事にも納得できます。
 

岩本寺の七不思議

37番札所の岩本寺は高知県の室戸岬に近い所に位置します。岩本寺には弘法大師にまつわる七不思議が残っています。
 
三度栗(さんどぐり)
栗を一年に一度ではなく、何度も食べたいという子どものために、弘法大師が歌を詠みました。すると、栗の木は子供がとりやすいように低くなり、一年に三度も実を付けるようになりました。また、栗の実は甘く、イガは柔らかくなったと言います。
 
子安桜(こやすざくら)
岩本寺の桜の木の下で妊婦が苦しんでいると、大師が祈祷をして無事に出産させることができました。現在、岩本寺にある子安桜は安産祈願のお守りとして信仰されています。
 
口なし蛭(くちなしひる)
田植えの際に農民が蛭に血を吸われて困っていた。すると、大師が蛭の口を無くしてくれました。
 
桜貝(さくらがい)
大師は岩本寺の近くの浜に桜を植えました。しかし、数年後に大師が再び訪れた時には桜の花が散っていました。そこで大師は歌を詠むと、浜にいた買いが桜の色に変わりました。現在でも岩本寺の近くの浜では桜色の解が見られます。
 
筆草(ふでくさ)
筆の形をした草が生えています。これは大師の持っていた筆が地面に落ち、そこから生えた草だと言われています。「弘法筆を選ばず」というように、弘法大師は書の達人です。そのため、この草を持っていると字が上手に書けると言われています。
 
伊予木川の貝(いよきがわのかい)
大師が川を渡った時に貝が足に刺さりました。そこで次に渡る人がけがをしないように、貝のとがった部分を取ってしまいました。
戸立てずの庄屋
盗人に家を荒らされ、庄屋が困っていました。そこで、大師が祈祷をして泥棒が入らないようになりました。そのため、戸締りをしなくても良くなってしまいました。

教訓

このような伝説は、本当に弘法大師は強力なパワーを持っていたのか。と言うことを考えたくなりますが、このストーリーは何を伝えようとしているかを考えます。
実は、現在に残る弘法大師の伝説の多くは「困っている人を助ける」「悪者は懲らしめられる」「独り占めしない」という人間の基本的な原則が語られています。
岩本寺の七不思議では「三度栗」「子安桜」「口なし蛭」「伊予木川の貝」「戸立てずの庄屋」の5つに「困っている人を助ける」というメッセージが込められています。
実際に、伝説通りの事が起こったかどうかは分かりませんが、弘法大師が何らかの手段で困っている人を助けていたため現在まで語り継がれているのです。
多くの人の心に影響を与え、リーダーとなり尊敬されるためには、弘法大師のように人を思いやる気持ちが大切だということが分かります。