仏教の信仰対象である仏の姿をあらわした仏像には様々な種類があります。名称や姿など仏像によって異なり、意味やご利益も様々です。仏像の中でも、聖観音菩薩(しょうかんのんぼさつ)は種類の多い観音像の基本形となる仏像です。
観音菩薩は観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)や観自在菩薩(かんじざいぼさつ)といった言い方がありますが、同じものを意味します。本来、梵語で表されたものを漢字に翻訳しているので訳し方が異なるだけです。
また、仏像にはランクが設定されており、菩薩と名付けられた仏グループは如来と名付けられた如来グループに次いで高いランクにあります。
如来は悟りの境地に至った仏で、菩薩はまだ悟りには至らず修行をしている立場にあります。同時に菩薩は我々を手助けし悟りへと導くとされています。そのため、如来より我々に近い存在の仏像ということになります。
聖観音菩薩のエピソード、仏像の特徴、ご利益を順に見ていきましょう。
聖観音菩薩のエピソード
聖観音菩薩は阿弥陀如来が変化した姿
観音菩薩と名の付く仏像には頭に阿弥陀如来が付いている仏像が多くあります。それは、観音菩薩は阿弥陀如来が変化して、あえて悟りを開く前の姿になっていることを意味します。如来より我々に近い菩薩という存在となり個人個人を救済するという意味が込められています。
悟りを開いた如来というトップクラスの位に付けるにもかかわらず、すべての人を救うために如来のサポートをします。そのため、聖観音菩薩は阿弥陀如来の隣に配置されることが多いです。
また、観音菩薩というグループの仏像には千手観音、馬頭観音など様々な種類があります。これは「観音経」という仏経典に「観音菩薩は三十三の変化をしてすべての人々を救う」という意味の記載があることに由来します。
三十三という具体的な数字ではなく、すべての人に合わせて何通りにも姿を変えて個別的に救済してくれるということです。聖観音菩薩はそのうちの1つということになります。
仏像の見方
菩薩像の特徴
菩薩グループの仏像には共通する特徴が見られます。菩薩の髪型は宝髻(ほうけい)といって髪の毛を結ってまとめています。一方、如来の髪型は螺髪(らほつ)と言ってブツブツしています。
また、服装はきらびやかで装飾品を身に付けています。これは菩薩が悟りを開いていないことを表しています。悟りを開いた如来像は質素な服装をしている場合が多いです。
観音菩薩の特徴
観音菩薩像グループの仏像には共通する特徴があります。前述のとおり観音菩薩は阿弥陀如来が変化した姿とされるので額の部分に阿弥陀如来が装飾されていることが多いです。これを化仏(けぶつ)と言います。
また、蓮の花を持っていることがあります。泥の中から綺麗な花を開かせる蓮の花は清浄な世界を意味しています。
聖観音菩薩の特徴
数ある観音像の中で聖観音菩薩にしかない特徴として一面二臂(いちめんにひ)というものがあります。これは観音菩薩の顔が1つ、腕が2つという意味です。
初期に作られた観音菩薩は顔が1つ、腕が2本の基本スタイルでしたが、時代が進むにつれてさらに多くの人を救う意味が込められるようになり、顔が増えたり手が増えたりして観音像のバリエーションが増えました。この初期のスタイルの仏像が聖観音菩薩です。
聖観音菩薩のご利益
観音様は様々に姿を変えて個人を救済します。そのためご利益の幅は非常に幅が広く、現世利益もあります。
また、「観音経」にある七難という外から身に降りかかる災難から守ってくれます。七難は次の通りです
・火難
・水難
・風難
・刀杖難(とうじょうなん)
・悪鬼難
・枷鎖難(かさなん)
・怨賊難(おんぞくなん)