仏教の信仰対象である仏の姿を現した仏像には様々な種類があります。服装や表情など仏像によって異なります。それぞれの仏像に意味が込められ、得られるご利益も異なります。仏像の中でも大日如来(だいにちにょらい)は真言宗や天台宗などの密教で祀られています。
如来と名の付く仏像は既に悟りを開いているという設定なので、仏像の中でも最高ランクの位置づけにあります。主な如来には釈迦如来、薬師如来、阿弥陀如来、大日如来があります。
大日如来のエピソード、仏像の特徴、ご利益を順に理解していきましょう。

大日如来のエピソード

大日如来はあらゆる仏のトップ
初期の仏像は仏教の開祖である釈迦をモデルとした釈迦如来像のみでした。しかし、時代が進み仏教の解釈が進むにつれて多様な仏経典が生まれました。釈迦如来以外の仏像は経典に登場する空想上の仏をモデルとしています。
大日如来は密教の経典で仏の中の王と考えられています。密教の代表例は真言宗および天台宗が有名です。
密教の経典では、この世のすべてが大日如来に含まれ、すべては大日如来から生まれて大日如来に帰するという設定になっています。
宇宙そのものが大日如来というスケールで、大日如来の「大日」は宇宙全体のすべてを遍く照らすという意味です。大日如来が放つ光明は消えることがなく、暗闇を全て明るくし、様々な働き・ご利益があるとされています。
密教経典である「金剛頂経」および「大日経」に大日如来は登場します。また詳しく見ると、前の経典では金剛界大日如来が、後者は胎蔵界大日如来が登場し、それぞれ真言宗系、天台宗系の寺院で祀られています
金剛界大日如来は悟りを開くために必要な智慧を象徴し、胎蔵界大日如来は無限の慈悲を象徴します。

仏像の見方

如来と名の付く仏像は悟りを開いている仏をモデルとしているので欲がなく質素な服装で作られていることが多いです。しかし、あらゆる仏のトップとして君臨する大日如来の威厳を示すために宝冠、腕飾り、胸飾りを身に付けています。
大日如来像のきらびやかな服装は他の如来グループ(釈迦如来、薬師如来など)と大きく異なる特徴です。
大日如来には2種類あるということを説明しました。1つは真言宗系で祀られている金剛界大日如来、もう1つは天台宗系で祀られている胎蔵界大日如来です。これらは手に結ぶ印相の違いで見分けることができます。
金剛界大日如来の印は智拳印(ちけんいん)と言い、手を忍者のように組んでいます。一方、胎蔵界大日如来は法界定印(ほうかいじょういん)と言い、手を座禅の時のように膝の上で組んでいます。

大日如来のご利益

密教経典には真言(しんごん)という言葉があります。各々の仏には真言が決められており、真言を唱えることでご利益につながります。
真言は梵字で書かれサンスクリット語が由来となっているため呪文のように何を言っているのかわかりません。しかし、その音調が重要とされているため敢て原文のままを唱えます。
中でも、光明真言(こうみょうしんごん)は大日如来の真言として知られています。光明真言を108回唱えて清浄な土砂を拝み、墓地にその土砂を巻くことで死者の罪は許され、浄土に行けるとされています。
また、胎蔵界大日如来の真言はあらゆる邪魔、障害を取り除いてくれるご利益がありとされています。つまり、生者にも個人にも大日如来はご利益を与えてくれるのです。