仏像とは、仏教の信仰対象である仏の姿を目に見える形に作られた像です。仏像の種類は多岐にわたり、ご利益も異なります。仏像の中でも文殊菩薩(もんじゅぼさつ)は智慧を象徴する仏として有名です。
文殊菩薩が登場する有名なことわざに、三人寄れば文殊の知恵があります。そのため、文殊菩薩に合格祈願や学力向上の祈願をする人もいます。
文殊菩薩のエピソード、仏像の特徴、ご利益を順に解説します。

文殊菩薩のエピソード

菩薩とは
菩薩とは悟りに至るために精進する修行者を表します。そのような徳の高い修行者は尊敬され、仏様として信仰を集めるようになったのです。
菩薩は人々を救うために様々な手法を取ります。文殊菩薩は人々に智慧を与えて悟りに向かわせるよう働きます。観音菩薩は人々のニーズに合わせて変化することで救済するという方法が専門です。このように、菩薩によって得意分野が異なります。
智慧の仏様
文殊菩薩は智慧の仏様として信仰を集めています。ここでいう「智慧」とは仏教用語で悟りを開くための方法や心理を見極める認識力と言った意味で使われます。単なる知恵や知識のように、テストの点数で測れるものではありません。
しかし、いつの間にか一般的な知恵・知識の象徴にもなりました。三人寄れば文殊の知恵はこちらの意味で使われています。
相方は普賢菩薩
文殊菩薩は単独で祀られる場合もありますが、セットで祀られる場合も珍しくありません。中央に釈迦如来、左に文殊菩薩、右に普賢菩薩が配置される釈迦三尊像があります。
釈迦如来像の左右に配置される仏像は脇侍(わきじ)と言います。文殊菩薩は智慧の象徴、普賢菩薩は修行の象徴です。釈迦のように悟りを開くためには智慧と修行がバランスよく必要だという意味が込められています。
仏教では頭で考えるだけではダメ、修行で鍛えるだけでもダメ、どちらもバランスよく必要だとしており、知行一致(ちぎょういっち)と言います。
五台山が文殊菩薩の聖地
華厳経という仏典によれば「清涼山に文殊菩薩は住む」とされています。この山は中国では位置関係から五台山(ごだいさん)に相当するとされ、文殊菩薩の聖地となっています。
四国八十八ヶ所31番札所の竹林寺は高知県の五台山にある札所で本尊は文殊菩薩です。山の名前はもちろん中国の五台山に由来します。

文殊菩薩像の特徴

菩薩の特徴
・宝髻(ほうけい)
・きらびやかな服装・装飾品
菩薩グループの仏像には宝髻(ほうけい)という髪の毛を結ってまとめてある髪型が見られます。一方、如来の髪型は螺髪(らほつ)と言ってブツブツしています。
また、菩薩の服装はきらびやかでネックレスのような装飾品を付けています。これは菩薩がまだ悟りに至っていないという設定を表しています。一方、既に悟りに至った如来像は質素な服装をしていることが多いです。
文殊菩薩の特徴
・右手に剣を持つ
・左手にお経を持つ
・獅子に乗る
・多面多臂でない
・顔が幼い
文殊菩薩は持ち物に特徴があります。右手には智慧の象徴である剣を持ち、間違った理論を剣で破り、正しい道に戻す働きがあります。左手にはお経を持ち、正しい教えに導いてくれます。お経は蓮華の上や頭上に乗っている場合もあります。
多くの仏像は蓮華の上に座っていますが、文殊菩薩は獅子の上に載っていることがあります。文殊菩薩の智慧が百獣の王のように最強であることを表しています。
千手観音のように顔や腕を複数持つ仏像があります。人間離れした能力で変身したりご利益を授けるという設定だからです。しかし、文殊菩薩にはこのように多面多臂の像は見られません。それは、モデルとなった人物が存在するからです。
そのため、より人間に近い姿で仏像が作られます。文殊菩薩の智慧は子供のように清らかで汚れていないことを示すため、顔が幼い子供のように作られている像もあります。

文殊菩薩のご利益

学力向上、合格祈願
文殊菩薩は学業成就にご利益のある仏様として有名です。受験シーズンになると多くの学生が文殊菩薩をを参拝しています。
学業成就があまりにも有名なので、その他のご利益はあまり知られていません。実は文殊菩薩には安産のご利益や、家屋を守るご利益があります。
文殊五十万遍
文殊菩薩の真言(オン・アラハシャノウ)を唱える回数によって次のような効果があるとされています。ただし、回数が多すぎるので本気で修業する人でなければ確認できません。

唱える回数 ご利益
10万回 修行者の苦悩を取り除く
20万回 輪廻の重罪を減らす
30万回 仏の境地が現れる
40万回 記憶を堅持して忘れない
50万回 無上の菩提を成就する