仏像は仏様の姿を表す像で、人間でも仏様を見て拝めるようにという目的で作られました。仏像の種類は様々で、意味やご利益も異なります。仏像の中でも虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)は密教系の寺でよく見られ、空海とも関連します。
○○菩薩という仏様は悟りを開くために修行中という設定になっています。悟りに至ると○○如来(にょらい)と呼ばれるようになります。虚空蔵菩薩も修行中の身分ということになります。
そんな虚空蔵菩薩のエピソード、仏像の見方、ご利益を順に理解していきましょう。

虚空蔵菩薩のエピソード

虚空蔵菩薩の智慧
虚空蔵菩薩は智慧の仏様として信仰を集めています。虚空蔵とは無限に広がる宝庫を意味します。宇宙のように広い蔵から智慧や財宝を無限に引き出し、人々を救ってくれると考えられています。
ちなみに、智慧(ちえ)は仏教用語で、悟りを開くための方法や心理を見極める認識力と言った意味で使われます。テストの点数で測れるような知識ではありません。
空海も実践した求聞持法(ぐもんじほう)
虚空蔵菩薩の真言(ノウボウ・アキャシャ・ギャラバヤ・オン・アリ・キャマリボリ・ソワカ)を100万遍唱えるという修行があります。これを虚空蔵菩薩求聞持法といい、これを達成した者には無限の記憶力が与えられ、見聞きしたことは忘れなくなるとされています。
1日に1万回を100日繰り返すという求聞持法は非常に厳しい修行で、誰でも習得できるものではありません。
真言宗の開祖である空海は求聞持法を達成した人物として有名です。空海が密教を日本に伝える前、高知県の室戸岬や徳島県の太龍嶽で修業を行いました。室戸岬には今でも空海が修行をしたと伝えられる洞窟が残っています。

虚空蔵菩薩像の見方

菩薩の特徴
・宝髻(ほうけい)
・きらびやかな服装・装飾品
菩薩グループの仏像には宝髻(ほうけい)という髪の毛を結ってまとめてある髪型が見られます。一方、如来の髪型は螺髪(らほつ)と言ってブツブツしています。
また、菩薩の服装はきらびやかでネックレスのような装飾品を付けています。これは菩薩がまだ悟りに至っていないという設定を表しています。一方、既に悟りに至った如来像は質素な服装をしていることが多いです。
虚空蔵菩薩の特徴
・右手に剣
・左手に宝珠
虚空蔵菩薩は右手に宝剣(ほうけん)を持っています。この剣の先端は丸みを帯びた形をしており、智慧の象徴とされています。右手に剣を持たないこともあり、その場合は手のひらを見せる与願印(よがんいん)をしています。
ちなみに、「三人寄れば文殊の知恵」でおなじみの文殊菩薩も知恵の象徴である剣を持っています。剣を持っている仏像は智慧に関連するのです。
左手は宝珠(ほうじゅ)を持ちます。また、宝珠が乗った蓮華を持っている場合もあります。宝珠は何でも願いをかなえてくれる宝物で、虚空蔵菩薩が人々を助ける道具です。

虚空蔵菩薩のご利益

絶大な記憶力
虚空蔵菩薩は智慧の仏様として信仰を集めてきました。実際に、空海も虚空蔵菩薩を拝み求聞持法という修行を達成して絶大な記憶力が得られたと伝えられています。そのため、合格祈願や記憶力アップと言ったご利益があるとされています。
十三詣り
毎年4月13日に京都・嵐山の法輪寺で行われる十三詣り(じゅうさんまいり)が有名です。これは子供が13歳になった時に法輪寺の虚空蔵菩薩を参拝し、智慧や記憶力を授かるという行事です。
参拝後は渡月橋を渡り終えるまでは振り返ってはならないとされています。虚空蔵菩薩から授かった智慧が消えてしまうためです。