仏教の信仰対象である仏様の姿を現したものが仏像であり、様々な種類の仏像が作られてきました。服装や表情など仏像によって異なります。それぞれに意味が込められ、得られるご利益も異なります。仏像の中でも毘沙門天(びしゃもんてん)は勝負ごとにご利益のある仏像として知名度が高いです。
毘沙門天のエピソード、仏像の特徴、ご利益を順に説明します。
毘沙門天のエピソード
天部はガードマン
毘沙門天や帝釈天のように○○天と名のつく仏像は天部というグループに分けられます。仏像には如来や菩薩、明王といった種類があり、それぞれが役割分担をして人々を悟りに導きます。
簡単に説明すると、如来や菩薩は優しく、明王は厳しく人々を教え導きます。一方、天部はガードマン的な役割で境内に邪鬼(煩悩の象徴)が侵入しないように見張ります。そのため寺の入り口などに安置されることが多いのです。
インド→中国→日本に伝わる
毘沙門天のモデルはインドのヒンドゥー教に登場するヴァイシュラヴァナという神様で、財宝を守る神として信仰されました。
後に中国で仏教に取り入れられ、毘沙門天・多聞天と名付けられました。この時、武神としての信仰が生まれ、仏を守る守護神というポジションに着いたのです。
仏教とともに日本に取り入れられた毘沙門天は守護神としてだけでなく、勝負事にご利益があるとされました。そのため、戦国武将である上杉謙信が毘沙門天を厚く信仰したことは有名です。
七福神の一人、四天王の一人
▽四天王
・持国天
・増長天
・広目天
・多聞天(毘沙門天)
▽七福神
・恵比寿
・大黒
・毘沙門天
・弁財天
・福禄寿
・寿老人
・布袋
四天王とは仏教の須弥山(しゅみせん)という世界の四方を守る守護神です。毘沙門天は多聞天とも呼ばれ、北を守る役割を担っています。
日本に取り入れられた多聞天は、毘沙門天として日本独自の七福神にも取り入れられました。七福神とは、おめでたい存在や縁起物とされ、正月に枕の下に七福神の乗った宝船の絵を入れるとよい初夢が見られるなどの伝承がいくつもあります。
四天王の一員として祀られる場合は多聞天、単独で祀られる場合は毘沙門天と呼ばれることが一般的です。
兜跋毘沙門天
毘沙門天の一種に兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)があります。現在の中華人民共和国新疆ウイグル自治区にあたる兜跋国(とばつこく)に出現した姿を表現しているとされ、神秘的な力で外敵を退けるといわれます。
仏像の特徴として、兜跋毘沙門天は足元にいる地天女の両手に乗り、その傍らに2体の鬼が存在します。
毘沙門天像の見方
毘沙門天の特徴
・塔
・宝棒
・甲冑
・天邪鬼(あまのじゃく)
毘沙門天は手に塔を持つ場合があります。塔は仏教の祖である釈迦の遺骨(舎利(シャリ))が納められたもので、仏教を守っていることが表現されます。
毘沙門天はや宝棒などの武器や甲冑を身にまとっています。仏教を守護する四天王のメンバーとしての役割があるため、このように武装をして邪鬼や煩悩を払います。
毘沙門天は足元の天邪鬼を踏みつけています。人間の煩悩を表す天邪鬼を退治する様子は、仏教のガードマンとしてふさわしい姿です。
毘沙門天のご利益
必勝祈願
毘沙門天には勝負事に関するご利益が有名です。それは、四天王の中で最も強い神だとされるためです。特に戦国時代に多くの武将が信仰の対象とし、上杉謙信は自信を毘沙門天の生まれ変わりと考え、軍旗を「毘」の文字にするほど篤く信仰しました。
財宝福徳
毘沙門天のルーツはインドにあり、財宝や福徳をつかさどる神様として信仰を集めていました。そのご利益が現在にも伝わっているのです。毘沙門天のように天部に分類される仏像には現世利益(げんせりやく)を与える仏が多いことが特徴です。