仏像とは、抽象的で難しい仏教の真理を具体的でわかりやすい形で表現したものです。様々な仏典が存在するため登場する仏像の種類も多岐にわたります。仏像の中でも弁財天(べんざいてん)は七福神で唯一の女神であることでも有名です。
弁財天のエピソード、仏像の特徴、ご利益を順に説明します。

弁財天のエピソード

天部とは
弁才天や帝釈天のように○○天と名のつく仏像は天部というグループに分けられます。仏像には如来や菩薩、明王といった種類があり、それぞれが役割分担をして人々を悟りに導きます。
簡単に説明すると、如来や菩薩は優しく、明王は厳しく人々を教え導きます。一方、天部はガードマン的な役割で境内に邪鬼(煩悩の象徴)が侵入しないように見張ります。そのため寺の入り口などに安置されることが多いのです。
インドの河の神
弁財天はもともとインドの神様として誕生しました。実は仏教にはヒンドゥー教やバラモン教に登場する神々が取り入れられたという歴史があり、毘沙門天、梵天、帝釈天など天部に多く見られます。
これは釈迦の提唱した原始仏教から発展する過程で取り入れられたもので、仏教が流動的に存続してきた理由にもつながります。
インドで最も尊崇された女神であった弁財天は河神であり、学問や芸術の神としても崇拝されました
また、弁財天の日本での信仰は、奈良時代から始まったと伝わります。朝鮮半島から仏教が伝来した飛鳥時代から遅れて人々に浸透していったのです。
弁才天と弁財天
才能の才、財宝の財、を使って2通りの表記で表されます。この違いには由来があります。
弁才天は音楽や学問を司る神として信仰されていました。元々は河の神であり、川の流れる音が音楽を司るようになったことに由来します。また、琵琶(びわ)を持つ像は弁才天を表します。
一方、弁財天は財宝神としての側面が強くなります。特に日本で作られた仏典(弁天五部教)で
財宝を司るという設定が付加されたとされます。
五弁天
安芸の宮島、大和の天の川、近江の竹生島、相模の江ノ島、陸前の金華山には弁財天が祀られ、古来より五弁天と称されてきました。いずれも川や海の近くにあります。
広島県・宮島
奈良県・天の川
滋賀県・竹生島
神奈川県・江ノ島
宮崎県・金華山

弁才天・弁財天の見方

・女性的な顔立ち
・琵琶
・武器
・宇賀神
弁才天は女神であるため、女性的な顔立ちをしています。その他の女神は吉祥天などが有名です。また、音楽をつかさどる神としての側面があるため、2本の腕に琵琶という弦楽器を持ちます。琵琶を持つ場合は武器を手にしません。
一方、弁財天には仏教界を守る守護神としての側面があるため、邪気を追い払う武器を持つことがあります。8本の手に剣や斧、独鈷杵(どっこしょ)といった武器を持ち、このとき琵琶は持ちません。
稀に、頭はおじさん、体は蛇をした宇賀神(うかじん)という神様が弁財天の頭上でとぐろを巻いている場合があります。「千と千尋の神隠し」に登場する「お腐れ様」こと「名のある川の神」をイメージすると分かりやすいです。
宇賀神は日本古来の水神としてあがめられ、弁才天の水神のイメージにマッチしたため仏像に組み込まれるようになりました。

弁財天のご利益

学問・芸術
琵琶を持つことからも分かる通り、音楽や芸術に関するご利益があるとされます。また、学問の神としての一面もあり、「弁舌」、「弁解」という言葉があるように演説が上手になるといったご利益が知られています。
福徳賦与
豊穣や繁栄にご利益があるとされ、現在では財産が増えるといったご利益があるとされます。日本では七福神にも数えられることから多くの人々の信仰を集めます。
勝負事
弁財天は天部に属す仏であり、仏教の守護神としての役割を担います。仏教界のガードマンと考えると分かりやすいです。そのため、戦闘の神として勝負事にご利益があるとされます。