お遍路の格好をしているだけで小学生が挨拶してくれる

四国にはお遍路文化が根付いている
弘法大師が修業をした寺院を巡る四国八十八ヶ所お遍路の旅があります。1200年以上の歴史がある修行の地ですが、最近はバスや自家用車で巡る人が圧倒的に多くなっています。
しかし、全行程約1400kmを歩いて巡る人も少なからずいます。昔から修行者たちが歩いた道は「へんろ道」として現在でも残っており、山道や田んぼ、住宅地などを歩くことになります。
地元の人たちはお遍路さんを見かけると挨拶をしたり、お接待をしてくれたりします。お接待とはお茶や食べ物などを無償でお遍路さんに差し上げることを言います。
小学生でさえお遍路さんに挨拶をします。私も歩き遍路の経験がありますが、地元の人に挨拶されたり話しかけられた回数は数えきれません。こちらから話しかけてもほとんど怪しまれません。
中でも小学生の女の子に挨拶されたことが忘れられません。4人の女の子が家の庭で遊んでいて、その横を通りかかったとき、
女の子「こんにちは」
僕「こんにちは」
女の子「がんばってください」
僕「ありがとう」
たったこれだけの会話ですが、すごく癒され応援されていると感じました。普段小学生と話す機会なんて無かったので新鮮でした。
お遍路の格好をしていなければ話しかけられない
女の子が僕に挨拶をしたのは、僕がお遍路さんの格好をして歩いていたからです。白装束を着て菅笠をかぶり、金剛杖をついていました。
普通の親は、知らない人にでも挨拶をしなさいと教えません。しかし、お遍路さんには挨拶をしなさいと教えます。それは、お遍路は元は修行の場であり、お遍路さんは修行を真面目に頑張っている良い人だというイメージがあるからです。
そのため、僕がどんな人物か知らなくてもお遍路の格好をしているので挨拶されたり話しかけられたりします。さらに、僕は真面目で頑張っている人だと思われます。
これは社会心理学でハロー効果と説明されます。ハローとは聖母マリアなどに描かれる後光を意味します。後光が描かれるだけでその人物は神聖な人だと思わせることができます。
お遍路の衣装や装備が後光と同じ役割を果たしているのです。
お遍路の格好をしているだけで称賛される
このようにお遍路の衣装で四国を巡っていると、頑張っている人、真面目な人、偉い人と見なされ、時には拝まれることもあります。たとえ自分が未熟で小さい人間だとしても、その容姿から判断されているのです。
それだけ評価されると勝手にうれしくなってしまいます。人は他人から称賛されると喜ぶ習性があります。四国を回れば回るだけ他者に認められ気分が良くなっていくでしょう。
また、他人から認められると、その思いに反しないように自分も頑張らなくてはと感じるため良い人格が形成される方向に働きます。
お遍路に決められたルールはありません。しかし、他人が見てお遍路をしていると思わせるグッズは揃えた方がハロー効果を発揮し醍醐味を味わうことができるのです。