お遍路では悩めない
平安時代に生きた弘法大師(空海)に関係の深い四国八十八ヶ所の寺院を巡るお遍路があります。現在ではバスや自家用車で巡る人が多く、気軽に体験することができます。
しかし、全行程を徒歩で巡るという人も少なからずいます。四国を一周するように歩くお遍路の距離は約1400km、期間は約40日と言われています。
歩いて行く人には理由があります。「自分発見のため」、「死者の供養」、「懺悔」といった理由が多いというアンケート結果があります。
「自分発見」が目的でお遍路に来る人は20代から30代の若者が圧倒的に多く、人間関係の問題だったりコンプレックスを抱えていたり、悩みを持っています。
しかし、四国でお遍路をしてもこれらの悩みの具体的な解決方法を見つけることは難しいのです。なぜなら、お遍路では悩むことができないからです。
足が痛いだけ
私も歩き遍路の経験があり、多くのことを学びました。そのうちの一つに、「お遍路では悩めない」と言うことがあります。
実際に歩いて札所を回っていると、悩んでいる時間はありません。足の痛み、次の札所までの距離、時間、昼食の場所、宿の予約、トイレ、水分補給、暑さ、肩の痛み、と言うようなことで頭がいっぱいで自分の悩みの解決方法を考える余裕がないのです。
また、多くのお遍路さんは同じ方向に歩いているので、一緒に歩くことが良くあります。私と一緒に歩いてくれたお遍路さんも「お遍路は悩めないですね。ただ足が痛いだけです。」と言っていました。
実は、お遍路には時間的、数量的な制限が多くかけられています。各札所で御朱印をもらっている人は17時までに寺に到着しなければなりません。それ以降は納経所が閉まります。また、宿が少ない地区では予約が埋まってしまい野宿することになるかもしれないのです。
悩まないことが良い
お遍路さんは自分の悩み事ではなく、時間や宿の予約などを考えて寺を回っています。これを88回繰り返して結願すること(八十八ヶ所を全て回る事)ができます。つまり目標を達成することができるのです。
お遍路を人生の縮図であると考えると、何か目標を達成したいときには、その目標に関係のない悩み事を一切気にしないことが近道となるのです。
もし、何か達成したい目標があるにもかかわらず、他の悩み事に気を取られているなら、目標に対する決意が不十分だということになります。
お遍路さんは、「八十八ヶ所の寺を全て回る」と言う目標を持ち四国と言う隔離された土地に来ています。すぐに投げ出して帰れる状況ではありません。そのため本気度が高いのです。
本気度が高いほど邪念、煩悩、悩みが消え、目標に向かって一直線に進むことができるのです。
ビジネス、受験勉強、スポーツ、人間関係など、自分を変えたいと思っているのに、他の事に気を取られ本気になれなったことが無いという人は歩き遍路で実体験すると何か気づくかもしれません。
バスツアーのお遍路は悩み放題
四国八十八ヶ所のバスツアーが多くの旅行会社で企画されています。このツアーには先達さんと言ってお遍路にまつわる知識が豊富な人が案内をしてくれます。
巡拝作法、お経の読み方、弘法大師のエピソードなどを知ることができます。宿や食事の心配をしなくても、決められた時間に沿って札所を巡ることができます。
観光をしたい人や歩くことが困難な人にとっては最適な旅となりますが、悩みを解決したいという人や自分発見をしたい人には不向きです。
バスの中では暇な時間が多く、ひたすら悩み続けることになるからです。悩んでも悩んでも解決方法を見つけることは難しく、ドツボにはまってしまいます。悩むことをやめるという発見から離れてしまいます。