お遍路で願いは叶うのか
弘法大師・空海にゆかりのある札所を巡る四国八十八ヶ所、お遍路の旅があります。その距離は1200~1400km、昔から多くのお遍路さんが様々な思いで巡礼をしてきました。
お遍路の目的は観光、修行、願掛け、信仰心など多様です。現在でも巡礼をするお遍路さんは札所でお経を唱えて、ご利益を得ようとします。
私が出会ったお遍路さんの中に、昔は関節リウマチで歩けなくなるまで悪化したが、お遍路で少しずつ歩いていると回復し歩けるようになったという方もいました。
また、お遍路を回ると心に変化が起きます。旅の道中で自分と向き合い、内面が成長するためです。人間性が向上すると、不安やストレスが消えたり、恋人ができたりすると言われます。
では、何回お遍路をすれば願いがかなうのでしょうか。
何度もお遍路をする人々
私も歩き遍路の経験がありますが、道中で出会うお遍路さんの中には10回以上お遍路をしている先達さんがいました。先達とはベテランお遍路さんの事で、4回以上お遍路を結願すると先達になる資格を得ることができます。
かつて、中務茂兵衛(なかつかさもへえ)という大先達がいました。彼はお遍路に魅せられて280回も回っています。そして新人お遍路さんが道に迷わないように多くの道しるべを設置した人物です。
彼のように100回、200回もお遍路をしなければ願い事は叶わないのか。または、歩いてお遍路をしなければ願い事は叶わないのか。残念ながら、それは誰にもわかりません。
神様仏様は願いを叶えてくれない
お遍路でのお願い事は、死者の供養や自身の健康のためなどバリエーションに富んでいます。しかし、神様仏様にお願いするだけでは自分に関する願い事は実現できません。
・寿命を延ばしたい
・金持ちになりたい
・恋人がほしい
・自分探しをしたい
・罪を懺悔したい
このような自己の問題は誰にお願いしても解決してくれません。自ら努力をすることで実現させなければならないのです。
例えば、寿命を延ばしたいなら健康な食事や運動を継続します。恋人が欲しければ相手に喜んでもらえることを常に考えます。自分探しの答えは誰も教えてくれません。どれだけお遍路をしても罪の気持ちは自分から消え去ることはないのです。
では、お遍路は何のためにするのでしょう。それは、どうすれば自分の願いを自分で叶えられるようになるか必死に考えるためです。答えは誰も教えてくれません。お遍路では常に問われ続けるのです。その問いに対する答えを、自ら発見してください。
昔の人と現在の人
現在は医療技術が向上し交通網も便利になったので弘法大師が生きた時代と環境が全く変わってしまいました。しかし、人間の脳機能は大きく進化していません。
お遍路や仏教といった方法は人々の悩みを解決し不安を取り除いてきました。そのため、現在でもお遍路は残っているのです。多くの日本人が歩んだ道のりを辿ることはお悩み解決、願い事が成就するきっかけとなるはずです。