仏教の信仰対象である仏の姿を表現する仏像には多様な種類があります。姿勢や持ち物なども様々で、意味も異なります。当然ながら得られるご利益も異なります。仏像の中でも准胝観音菩薩(じゅんていかんのんぼさつ)はマイナーな仏様ですが真言宗の寺で見ることができます。
准胝観音菩薩は観音様と呼ばれる仏の一種です。そもそも、観音様は人々の声(音)を観察することで救いの手を差し伸べる仏様です。
准胝観音菩薩のエピソード、仏像の特徴、ご利益を順に紹介します。

准胝観音菩薩のエピソード

観音菩薩は変化する
○○観音と名の付く仏にはバリエーションがあります。たとえば、千手観音や十一面観音が有名です。なぜ、様々な観音様が存在するのでしょう。
前述のとおり、観音様は人々の声を聞き救い出してくれる仏様ですが、人々の不安や悩みは千差万別です。しかし、観音様はそれぞれの人に対して最も必要とする姿に変化して現れ、救ってくれるとされています。
その変化の様子を仏像としてあらわしたために、手足や頭がたくさんある観音像が作られるようになりました。
本当は准胝観音は観音様ではなかった
准胝観音は七倶胝仏母(しちぐていぶつぼ)という別名を持っています。実はこれが本来の名前で、観音様ではなく、菩薩の母という立ち位置の仏様でした。
後の時代に、真言宗の僧によって変化する観音様として加えられ、准胝観音として信仰を集めるようになったのです。その名残で准胝観音菩薩は真言宗の寺で祀られています。
准胝とは清浄という意味
読み方が難しい准胝観音(じゅんていかんのん)ですが、准胝とは清浄を意味します。准胝観音は水の浄化の働きにより清浄をもたらしてくれる女神として信仰される一面も持っています。
六道のうち人道を救う

 


准胝観音は人間道を救うとされています。仏教の考え方に六道というものがあり、悟りに至っていない生物は、六道のループから抜け出せない輪廻という状態にあるといいます。
六道で生きる限りは煩悩や苦しみに悩まされ続けます。ループを抜け出すには仏道に入り悟らなければダメだという仏教の考えに結びつきます。
人間道は人間が住む世界で、最も仏になれる機会があるとされています。

准胝観音菩薩像の特徴

菩薩の特徴
弥勒菩薩など、他の菩薩と共通する特徴がいくつかあります。
・宝髻(ほうけい)
・きらびやかな服装
菩薩グループの仏像には宝髻(ほうけい)という髪の毛を結ってまとめてある髪型が見られます。一方、如来の髪型は螺髪(らほつ)と言ってブツブツしています。
また、菩薩の服装はきらびやかでネックレスのような装飾品を付けています。これは菩薩がまだ悟りに至っていないという設定を表しています。一方、既に悟りに至った如来像は質素な服装をしていることが多いです。
観音菩薩の特徴
千手観音など、他の観音菩薩に共通した特徴がいくつかあります。
・蓮の花や水瓶を持つ
泥の中から花を開かせる蓮の花は清浄な世界を象徴し、阿弥陀如来や観音菩薩のいる極楽で咲き乱れているとされています。水瓶(すいびょう)には功徳水と言われる有難い水が入っています。
准胝観音の特徴
・手が18本
・目が3つある
・頭上に仏面は無い
無数の手を持つ千手観音が有名ですが、准胝観音にも複数の手があります。そのため准胝観音と千手観音を見間違える人もいます。一般的に准胝観音は18本の手をもつ仏像が多く作られ、それぞれの手には数珠や蓮華などを持ち、これらの道具で人々を救います。
准胝観音の眉間には縦向きに第三の目があります。額に注目すれば千手観音と区別することができます。
観音様の頭上には阿弥陀如来が刻まれていることが多く、これを化仏(けぶつ)と言います。観音菩薩は阿弥陀如来が変化した姿だとされていることに由来します。
しかし、准胝観音は元は観音様ではなく、真言宗の僧侶によって観音様のグループに属するようになりました。そのため、化仏はありません。

准胝観音菩薩

安産・子宝
安産祈願のご利益は、あらゆる仏の母とされる准胝観音らしいご利益です。また、安産のエピソードとして醍醐天皇にまつわるものがあります。
醍醐天皇は跡取りとして子供を授かりたいと祈願したところ、2人の男の子を授かることができたそうです。西国三十三ヶ所11番札所の上醍醐寺には准胝観音が祀られています。
延命
准胝観音の真言を毎日108回唱えると寿命を最高で21年伸ばすことができるとされています。准胝観音が地獄の閻魔大王に寿命を延ばすように命ずるのです。