歩き遍路をしていると気付くことがあります。それは、四国では時間がゆっくり流れているということです。お遍路さんはそれを「お四国時間」呼びます。
弘法大師・空海の時代から1200年の歴史を持つお遍路ですが、長い時間の中でお遍路のスタイルは変化しました。初期のお遍路は弘法大師の足跡を辿る修行の旅でしたが、時代が進むにつれて観光スポットとなりました。
仕事を持つ人でも連休などを利用して四国に訪れます。都会の忙しさから離れて癒しを求めに来るのです。
都会から来たお遍路さんは四国では時間の流れ方が違うといいます。私が出会ったお遍路さんは、四国ではすべてがゆっくり進み、リラックスできると話しました。
1日24時間という原則は同じですが、なぜ四国では時間がゆっくり流れるように感じるのでしょうか?
自然のスピードに反した都会時間
人類が他の動物と大きく異なる点の1つに文明を生み出したことがあります。そして、18世紀に産業革命がおこり生産性が急速に向上しました。
人間の生活において効率化が進むにつれて人間が移動するスピードも上がりました。昔は歩いて移動するしか方法はありませんでしたが、現在では飛行機を使えば1時間に800km進むことができます。また、インターネットにより情報のスピードも速くなり、膨大な情報量を扱うようになりました。
しかし、このスピードは動物としての人間のスピードをはるかに超えています。確かに、産業は発達しましたが、人間の体や脳はホモサピエンスとして地球上に現れた約25万年前からほとんど進化していないのです。
そのため、速くなりすぎたスピードに付いて行けずに体調を崩すことがあっても不思議ではありません。特に、都会で働く人は忙しさを感じやすいです。毎日の通勤ラッシュ、仕事の締め切り、渋滞など自然のスピードに反したものばかりあるためです。
自然のスピードに従ったお四国時間
一方、歩き遍路をしていると自然のスピードに従うことが多くなります。
日の出とともに宿を出発して、時速4kmというゆっくりしたスピードで歩き、夕方には宿に到着します。そしてぐっすり寝て次の日も同じことを繰り返します。
このようなエンジンに頼らない動物本来のスピード、リズムに従った生活は体内時計の調節やストレスの解消につながる可能性があります。また、適度な疲労感も逆に心地よく感じます。実際に、歩き遍路で体調がよくなるという研究結果が報告されています*。
また、仕事のスピード、効率化が重視される時代ですが、四国を歩くとコツコツすることの大切さを身をもって経験できます。
1200km先の88番札所にたどり着くためには1ヶ所ずつ段階を経て進まなければなりません。無理をして走りながらお遍路をすると体を壊すことは目に見えています。
もし、忙しい毎日に息苦しさを感じているのであれば歩き遍路でリセットしてみてはどうでしょうか。
*リンク
Biomarkers for the evaluation of immunological properties during the shikoku walking pilgrimage.