レスポンデント条件付け:リーチ中に脳汁が溢れ出る

ギャンブルを続けることによって、ギャンブルを辞められなくなってしまうことがあります。その原因はギャンブルにあり、結果として脳内のホルモンのバランスが崩れることになります。
ギャンブルをすることでどのような反応が起きているのかを理解することは、ギャンブルを辞める方向に向かうために意味がある事です。ギャンブルにハマってしまう原因を多く知ることで、学習し反省することにつながるためです。
そこで、今回はレスポンデント条件付け(古典的条件付け)について紹介します。

レスポンデント条件付け

人間は成長する過程で「学習」します。「学習」とは勉強する事だけではなく、自身の経験も含まれます。たとえば、梅干を食べると酸っぱいと知っているので、見るだけで唾液が出てきます。
梅干を食べたことが無い外国人は、口に入れた瞬間に酸っぱさを感じて唾液が出ますが、日本人は口に入れる前から唾液が出ています。
このように、知識や経験から学習し刺激を受ける前に反応してしまうことを「レスポンデント条件付け」と言います。
レスポンデント条件付けは生理学者のパブロフが行った実験がもとになった理論です。
パブロフの実験

犬にエサを差し出すと犬は唾液を出します。この犬にベルの音を聞かせても唾液は出ません。そこで、エサを与えるときは必ずベルを鳴らし、エサとベルを関連付ける訓練を繰り返します。しばらく訓練を繰り返すと、ベルが鳴っただけでエサを見せなくても唾液が出るようになります。

 

脳汁

ギャンブルで当たると「脳汁が出る」と言われます。私もパチンコやスロットをやっていたので脳汁が出る感覚はよく分かります。脳内で分泌物がジワーっと大量に出てくるように感じます。
脳内で分泌される物質はドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンが有名ですが、これらが分泌されるのは神経細胞の間のシナプスと呼ばれる小さな領域です。そのため、このような物質が分泌されているという感覚を感じることはできません。
しかし、ドーパミンが分泌されると神経に電流が流れるスイッチが入るため心臓や血管に伝わり心拍数が大きくなったり血圧が上昇したりします。心臓がドキドキして脳の血流量が増えることで脳汁と言う感覚が生まれます。
パチンコやスロットで大当たりを引いたときは、出玉が大量に出てきて幸福感や満足感を味わうことができます。同時に、脳内で様々な物質が分泌され、特にドーパミン分泌が増えます。

脳汁の出るタイミング

パチンコは大当たりの前兆として長いリーチが発生することが多いです。図柄がすぐに揃うのではなく、1分も2分も演出を見なければなりません。大当たりを引くときはほぼ毎回、リーチの演出を経由して当たります。
パチンコ初体験の人は、そのリーチの信頼度が高いか低いか分からないため、あまり興奮せず当たった後で喜びます。当たった後でドーパミンなどが増えます。
しかし、パチンコの演出に慣れた人はリーチの信頼度がある程度分かります。「激熱」と表示されると、過去の経験から次に当たる確率が高い事が分かっています。そこで先に脳が反応して、大当たりを引く前に脳汁が出始めています。
「この後大当たりが来るぞ!」という反応が勝手に脳内で起きているのでドーパミンが増えて心臓はドキドキし、血圧は上昇しています。梅干を食べる前に唾液が出る状況、ベルを鳴らすと犬の唾液が出る状況と同じような現象が起こっているのです。
 

「激熱」と表示されてハズレると・・・

期待できる長いリーチの末に外れることもあります。リーチの間に脳内では様々な神経伝達物質が分泌されて大当たりを引いたときと同じような状況が整っています。過去の経験から勝手に反応しているためです。
しかし、結果が得られなかったら興奮は一瞬で冷めてイライラが現れます。そして、もう少しで手に入れられそうだった幸せや満足感をさらに強く望むようになり、追加投資してしまうのです。
・空腹時に大好物の料理が目の前に出されて、食べようとした瞬間に取り上げられる時
・彼女と初めての夜に服を脱いだ後、さぁこれからと言う時に「やっぱりダメ」と言われる時
このような状況に似ています。お金で解決するのなら、いくらでも出したいと思うかもしれません。
このように、手に入れられないという希少性が増したときに、手に入れたい欲求がさらに増えることを心理的リアクタンスと呼びます。
私たちは、目の前にご褒美が出されることで脳内の報酬系が活性化し、過去の経験から幸福感や満足感を受け取る前に感じています。しかし、それが消えてしまうと猛烈にご褒美が欲しくなるのです。
自分が心理的戦略にまんまとハマっていることを自覚しなければなりません。人間の根本的な心理なので誰しも同じように反応します。しかし、知識が有ればそれを回避できる可能性があります。無知であれば死ぬまでハマります。