秘仏はご利益が倍増する

秘仏の御開帳に人が集まる
多くの寺院にはご本尊として仏像が祀られています。仏像は一般公開されているものもあれば、秘仏として見ることができないものもあります。
ここで質問です。一般公開され行けばいつでも見ることができる仏像と、秘仏とされ行っても見ることができないが今日だけ見ることができる仏像があります。あなたはどちらの仏像を見たいですか?
多くの人は秘仏を見たいと思います。そのため、数十年に一度、秘仏を見ることができる御開帳というイベントの際には多くの人が仏像を見に訪れます。
人は希少性が高いものは貴重だと思い込む傾向があるのです。仏像について何も知らなくても「秘仏」というだけで見たくなるのです。実際、先ほどの質問では仏像そのものに関する情報は一切ありません。どんな仏像か知らないが、秘仏は見たいという心理が働くのです。
希少性の原理
既に述べたように、人は希少性が高いほど貴重であると信じ込む傾向があり、これを社会心理学の世界では希少性の原理と呼びます。
買い物に行ったときでも「期間限定」「数量限定」と書いてあるだけで、他の商品より魅力度が増していることに気づきます。入手が困難になればなるほど私たちは魅力を感じ、手に入れるために争奪戦を繰り広げるようになるのです。
加えて、人は既に手に入れたものを失うことを嫌います。自分が手に入れた物は絶対に手放したくないと思うのです。これを心理的リアクタンス理論と呼びます。リアクタンスには抵抗という意味があります。
例えば、100年に一度御開帳される秘仏があり、今月中だけ公開されているとします。今は秘仏を見る権利を手に入れていますが、来月になるとその権利を100年先まで奪われることになります。多くの人は一度見ておこうとなるのです。
なぜ仏像を寺院で秘仏とするかは、はっきりと分かっていません。しかし、秘仏とすることで仏像の魅力が上がるという心理を働かせることになるのです。
また、秘仏は希少性が高まると同時に素晴らしさが増すため、仏像に扉の向こうからでもお祈りすることで、より一層の御利益があると感じてしまうのです。
四国八十八ヶ所 十番札所 切幡寺の秘仏
お遍路で訪れる札所にも秘仏となっている仏像があります。その内の1つを紹介します。
徳島県にある四国霊場第10番札所、切幡寺があります。この寺には即身仏の秘仏が祀られているとされています。即身仏とは、人間が瞑想しそのまま仏となった仏像です。つまり、ミイラの仏像と言うことになります。
昔、弘法大師がこの地を訪れた時、困っている大師に対して親切にしてくれた娘に感銘を受けました。そこで娘の願いをかなえようと言ってやると、娘は尼になりたいと言いました。大師が娘を尼にすると、娘はそのまま成仏し即身仏となったのです。
その娘の即身仏が、切幡寺の本堂の裏にある建物に安置されていることになっています。その建物には観音開きの扉が付いており、賽銭箱も用意されています。
残念ながら、この即身仏は絶対秘仏であるため一般公開されることはありません。