四国八十八か所霊場を巡るお遍路には1200年の歴史がありますが、お遍路には決まったルールはありません。そのためどのような手段で巡っても問題なく、観光バスツアーに参加する人や全行程を歩いていくという人もいます。
お遍路の手段が異なると、たとえ同じ札所を参拝したとしても全く異なったお遍路になります。今回は歩き遍路と観光バス遍路の違いについて比べてみます。
魅力となる部分が異なる
お遍路の魅力は、バスは札所、歩きは道
バスで回るお遍路はスピーディで快適に札所を回ることができます。1日当たり5~9ヶ寺のペースで進んでいくため、全行程は2週間程度となります。エンジンの力を借りることで移動時間を短縮するため札所に滞在する時間の割合が多くなります。
つまり、観光バス遍路の醍醐味は札所の境内ということになります。札所では静かな参道、鐘の音、古い建物、読経の声、豊かな自然など、癒しを感じることができます。
一方、歩き遍路はゆっくりと巡ります。札所間が約80㎞の箇所があり、2日間札所にたどり着けない行程があります。全行程は40日前後と言われています。すると、札所に立ち寄る時間は全体と比べたら僅かなもので歩いている時間が多くなります。
つまり、歩き遍路の醍醐味は移動時間ということになります。道中はお遍路さんや地元の人たちとの出会い、自身の鍛錬、結願の達成感などを経験することができます。
お遍路の理解度が異なる
バスツアーのお遍路では先達さんがガイドをしてくれることが多いです。先達さんはお遍路の作法や見どころに精通しているため解説を聞くことでお遍路がどのようなものか理解できます。お遍路の事を知れば知るほどお遍路が楽しくなると思います。
一方、歩き遍路では先達さんがガイドしてくれません。基本的に自分の足で進んでいかなければなりません。しかし、先達さんも教えることができない経験ができます。
※先達さんがガイドをしてくれる歩き遍路のツアーも存在します
お遍路の計画、宿が異なる
バスツアーのお遍路では自ら計画を立てる必要はありません。時間通りに集合さえすればあとは自動的に宿にたどり着くので楽です。かつては死を覚悟して巡礼していたお遍路ですが、これほど快適に巡礼できるのは、今の時代に生きているからですね。
札所の宿坊もキレイに整備されたところがあるため、快適な宿に泊まりながら朝のお勤めまで聞くことができます。まさに贅沢三昧です。
一方、歩き遍路は過酷です。すべてを自ら計画しなければなりません。札所間の距離、到着予定時刻、食事場所、宿の予約、トイレ、健康管理、天候などで頭がいっぱいになってしまいます。
歩き遍路では一日に歩ける距離は30km前後なので、山中の小さな民宿、遍路宿に泊まることになります。すると、ハイシーズンでは相部屋や予約が取れなくなることもあります。
相部屋となれば一期一会でお遍路さんとお話しできますが、予約が取れない場合はタクシーで町まで移動したり、野宿となってしまったりします。
まとめると、バスツアーのお遍路ではツアー参加者は同じような経験をすることになります。同じ旅館に泊まって、ガイドさんから同じ話を聞きます。歩き遍路では一人ひとりオリジナルなお遍路をすることができます。
気軽に楽しめるのはバスツアーですが、深く楽しみたいのであれば歩き遍路ということになります。