仏像とは、仏様の姿を見えるようにする目的で作られた像です。仏像の種類は多様で姿やご利益も異なります。仏像の中でも三面大黒天(さんめんだいこくてん)は戦国武将・豊臣秀吉が大切にしたことで有名です。

三面大黒天のエピソード、仏像の見方、ご利益を順に説明します。

三面大黒天のエピソード

本来は戦闘神

大黒天は七福神にも含まれ、開運や縁起の良いイメージがありますが、本来の大黒天は戦闘神・破壊神としての側面を持っていました

元々はヒンドゥー教に登場するシヴァ神が仏教に取り込まれ大黒天となりました。○○天と名の付く仏像は天部というグループに属し、仏教界を煩悩の象徴である邪鬼から守る役割を担います。そのため、優しい表情の大黒天だけでなく、武器を持ち、怒りの表情を表現した大黒天像も存在します。

大国主と大黒天

日本に仏教が伝来する前、日本は八百万の神を信仰する国でした。様々な神様が古事記や日本書紀に登場し、現在でも神社などで信仰が続いています。

のちに、仏教が伝来すると神道が廃れるのではなく、融合し共存した歴史があります。これを神仏習合と言い、大国主(おおくにぬし)と大黒天は同一視されました。「大国」と「大黒」の音読みが共通していることが原因です。

五穀豊穣や良縁の神として知られる大国主(おおくにぬし)は因幡の白兎などのエピソードで有名な神様であり、出雲大社などで祀られます。もともと戦闘神であった大黒天にこのような特徴が加わり、米俵を持ったり表情がやさしくなったりする変化が起きたとされます。

毘沙門天と弁才天

三面大黒天というネーミングは正面に大黒天、向かって左に毘沙門天、右に弁才天の顔があることに由来します。大黒天は前述のとおり戦闘神や五穀豊穣の神としての役割があります。また、毘沙門天は最強武神、財宝の神であり、弁才天は芸術や音楽、財宝を司る神です。

生きている間に得られるご利益を現生利益(げんぜりやく)と言いますが、三面大黒天は現世利益を持つ神々を合体させることにより最強クラスの開運チームを結成しているのです。

豊臣秀吉と三面大黒天

百姓の子から天下統一を成し遂げた戦国武将、豊臣秀吉は三面大黒天を年持仏として信仰したことで知られます。念持仏とは自分専用の仏像であり、常に礼拝できるように持ち運び可能な小さな仏像が一般的です。

秀吉は三面大黒天を手に持ち、「立身出世できるなら粉々に砕けてしまえ」と願をかけて大黒天を地面に投げると見事に砕けてしまいました。秀吉は喜んで同じものを作り直し、長年崇拝したと伝わります。

三面大黒天の見方

・打ち出の小槌
・宝袋(ほうたい)
・米俵
・大黒頭巾
・毘沙門天
・弁財天

三面大黒天にはご利益を生み出す特徴が幾つも見られます。まず右手に打ち出の小槌をもちます。これを振るとどんな願いもかなうとされます。また、左肩に宝袋(ほうたい)という袋を担ぎ、財宝を運ぶことを示します。さらに、米俵の上に座り、五穀豊穣をもたらすことが表現されます。

三面大黒天には顔が3つあります。中央の大黒天は大黒頭巾を被った優しい表情をしています。向かって左には最強武神の毘沙門天、右には芸術や音楽を司る弁財天が融合します。

全体的に金運upに関係する様な持物が多いですが、棒状の武器である宝棒(ほうぼう)を持つ場合もあります。これは煩悩を砕くための道具で仏教界のガードマンであることを意味します。

三面大黒天のご利益

出世

三面大黒天には立身出世のご利益があるとされます。天下人に成り上がった豊臣秀吉が信仰したエピソードが有名です。

金運

大黒天、毘沙門天、弁才天にはいずれも財宝に関連するご利益があるとされます。つまり、それらを融合させた三面大黒天は最強の金運をもたらしてくれます。金運upを期待して大黒天像を店内に置く商店も多くあります。

勝負事

大黒天は本来、戦闘神でありました。また、毘沙門天にも必勝祈願のご利益があるとされます。天部に属する神仏は仏教を守るという使命から武器を持ち、力強い側面もあるのです。

五穀豊穣・良縁

出雲大社に祀られる大国主は五穀豊穣や縁結びの神として有名です。その大国主と大黒天は同一視された歴史があるため、同様のご利益があるとされます。