仏像は、人間が見ることのできない仏様の姿を見えるようにという目的で作られた像です。仏像には様々な種類があり意味やご利益も異なります。仏像の中でも不空羂索観音菩薩(ふくうけんさくかんのんぼさつ)は多くのご利益をもたらす仏様として知られています。
不空羂索観音菩薩のエピソード、仏像の特徴、ご利益を順に理解していきましょう。

不空羂索観音菩薩のエピソード

修行中の菩薩と悟らない菩薩
仏像にはグレードの差が設けられており、如来・菩薩・明王・天の順に悟りに近いとされます。既に悟りを開いた如来に対して、菩薩はまだ悟りに向けて修行中のという設定になっています。悟りとは仏教のゴールであり、悩みが消えた状態を言います。
また、様々な修行を乗り越え悟りを開く能力を得たにもかかわらず、あえて菩薩の位にとどまり、悟りを目指す人々をサポートする菩薩もいます。
修行中の菩薩には弥勒菩薩、現世で人々を救う活動をする菩薩には観音菩薩、文殊菩薩、普賢菩薩などがあります。
観音菩薩
観音様と呼ばれる仏様は観音菩薩を指し、不空羂索観音菩薩もその一種です。観音菩薩は人々の声を観察し救ってくれる仏だとされています。
また仏教の経典には、観音菩薩は人々の望みに応じた救済法を実行し、その度に変化(へんげ)して現れるという内容が記されています。
そのため、観音菩薩の変化の様子を表した仏像が作られるようになり、千手観音、馬頭観音など様々な種類の観音像が生まれました。
不空羂索の意味
不空と書いて空(むな)しからずと読みます。人々が悟りに至ろうと願えば必ず叶うため、決して空しくないことを表します。
羂索(けんさく)とは戦いや狩猟に用いる縄で先端に輪がついています。この道具は相手を殺さず生け捕りにするために使うことから、人々をもれなく優しく救うという意味があります。

不空羂索観音菩薩像の見方

菩薩に共通する特徴
・宝髻(ほうけい)
・きらびやかな服装
菩薩グループの仏像には宝髻(ほうけい)という髪の毛を結ってまとめてある髪型が見られます。一方、如来の髪型は螺髪(らほつ)と言ってブツブツしています。
また、菩薩の服装はきらびやかでネックレスのような装飾品を付けています。これは菩薩がまだ悟りに至っていないという設定を表しています。一方、既に悟りに至った如来像は質素な服装をしていることが多いです。
観音菩薩に共通する特徴
・阿弥陀如来の化仏
・蓮の花を持つ
観音菩薩グループの仏像には額の部分に阿弥陀如来が装飾されていることが多く、これを化仏(けぶつ)と言います。なぜ阿弥陀如来が装飾されているのか、それは阿弥陀如来が如来という身分を隠している姿が観音菩薩だとされているためです。
敢て悟りに至る前の姿に変身することでより人間に近い菩薩という立場から人々を救済することができます。
また、蓮の花は泥の中から花を咲かせるため、清浄な世界のシンボルです。阿弥陀如来や観音菩薩の住む極楽では蓮が咲き乱れているとされています。
不空羂索観音菩薩の特徴
・羂索を持つ
・三つ目八臂
・鹿皮をまとう
名前の由来でもある羂索(けんさく)を持ちます。羂索は狩猟に使う投げ輪で、これを使って人々をもれなく救います。
不空羂索観音菩薩の基本スタイルは顔が1つ、目は3つ。第三の眼は眉間に縦向きについています。さらに腕は8本あり、道具を持ったり合掌したりしています。
他の仏像には見られない特徴として鹿皮(ろくひ)をまとうことが挙げられます。鹿皮は鹿の皮でできな衣で左肩にかかっています。鹿皮観音の異名はこれに由来します。子供を思う気持ちの強い鹿のように、人々を慮るのです。

不空羂索観音菩薩のご利益

不空羂索観音菩薩には20のご利益があるとされています。ただし、これらの利益を得るための正式な拝み方があります。
毎月8日に行動や飲食を慎んで心身を正常にした上で、不空羂索観音菩薩の真言を唱え続け無ければなりません。
・病気をしなくなる
・病気にかかってもすぐ治る
・体がつややかになり、肌がきめが細かく柔らかくなる
・多くの人から敬愛され身を守られる
・財宝を得る
・財宝を盗まれない
・水や火の災難に遭わない
・国王により身を害されることがない
・事業で失敗しない
・植えた農作物に天候や害虫の被害が無い
・真言を唱えればすべての災難が消える
・悪鬼などに精気を奪われない
・恨みに畏れなくなる
・恨みが解消する
・他人や鬼神に畏れなくなり、呪いや邪気による害も無い
・すべての煩悩が消える
・火・刀・薬の災難では死なない
・諸天善神の加護を受ける
・どこに輪廻転生しても慈悲喜捨を忘れない