仏像とは、仏教の信仰対象である仏の姿を目に見える形に作られた像です。仏像の種類は多岐にわたり、ご利益も異なります。仏像の中でも普賢菩薩(ふげんぼさつ)は女性の信仰を集める仏として有名です。
普賢菩薩のエピソード、仏像の特徴、ご利益を順に解説します。
普賢菩薩のエピソード
菩薩とは
菩薩とは悟りに至るために精進する修行者や、既に悟りに至る力を持ちながらも、成仏せずにブッダの補助を買って出る者を指します。
前者の菩薩として弥勒菩薩、後者の菩薩として普賢菩薩及び文殊菩薩が有名です。今回の普賢菩薩は修行により悟りに至る能力を獲得していますが、現世に残り人々を救う活動をしているとされます。
修行の象徴
普賢菩薩は修行の象徴として祀られています。普賢菩薩は修行により悟りに至る能力を獲得しています。その修行の内容は施し、戒律、忍耐、精進、精神集中、智慧の獲得です。普賢菩薩は修行で得たすべての事を人々に授けようとする存在です。
相方は文殊菩薩
普賢菩薩は単独で祀られる場合もありますが、セットで祀られることも珍しくありません。中央に釈迦如来、左に文殊菩薩、右に普賢菩薩が配置されます。これを釈迦三尊像と言います。
釈迦如来の左右に配置される仏像は脇侍(わきじ)と言います。普賢菩薩は修行、文殊菩薩は智慧のシンボルです。2人の菩薩は悟りに至る能力を持ちながら、あえて悟りに至らず釈迦のサポートをしている様子が表現されています。
また、釈迦のように悟りを開き完璧な人間になるには修行と智慧が両方必要だという意味が込められています。仏教では頭で考えるだけではダメ、修行で鍛えるだけでもダメ、両社バランスよく必要だという考えがあり、知行一致(ちぎょういっち)と言います。
女人往生のシンボル
原始仏教は釈迦によって唱えられました。これを源流として様々な宗派が生まれたわけですが、初期の仏教では女性は性欲という欲望を連想させるため女性は仏道に入れないという考えがありました。
しかし、時代が進むと大乗仏教が生まれました。誰でも救われるという大乗仏教のなかで、女性も仏道に入り悟りに至れるという考えが発生しました。
法華経という仏典では、普賢菩薩が女性も悟りに至れると宣言するエピソードがあります。そもそも、普賢菩薩は仏になる前は女性でした。修行により自ら悟りに至る力を得たのです。そのため、女性からの信仰を多く集めることになりました。
眷属の女神
菩薩をサポートする部下が従事することがあります。これを眷属(けんぞく)と言い、普賢菩薩にも眷属が10人ついています。なんと、10人の眷属全員が女性です。10人の眷属は様々なご利益をもたらしてくれるとされています。
これらの眷属はもともと古代インド神話に登場する鬼で人を喰うなどの悪事を働いていましたが、釈迦の説法で仏道に入り普賢菩薩に従うようになったというお話です。インドの神様をも改心させて仏教に取り込むスケールの大きさを感じることができます。
普賢菩薩:仏像の見方
菩薩の特徴
・宝髻(ほうけい)
・きらびやかな服装・装飾品
菩薩グループの仏像には宝髻(ほうけい)という髪の毛を結ってまとめてある髪型が見られます。一方、如来の髪型は螺髪(らほつ)と言ってブツブツしています。
また、菩薩の服装はきらびやかでネックレスのような装飾品を付けています。これは菩薩がまだ悟りに至っていないという設定を表しています。一方、既に悟りに至った如来像は質素な服装をしていることが多いです。
普賢菩薩の特徴
・合掌している
・ゾウに乗る
普賢菩薩は何も持たず両手を合掌する像が一般的です。このポーズを合掌印(がっしょういん)と呼び静かな心を意味します。また、持物がある場合は三鈷杵(さんこしょ)と三鈷鈴(さんこれい)という道具を持ち、人々が仏道に入ることをサポートします。
普賢菩薩の大きな特徴として像に乗ることがあります。ゾウは大きな力を持つ動物で、仏教の大きな力を連想させます。また、ゾウが堂々と前進する様子は修行に打ち込む姿を象徴します。
普賢菩薩がのるゾウの牙は6本あり、布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧という6種類の修行を表します。
普賢菩薩のご利益
増益と延命
普賢菩薩のご利益は、幸せを増やす増益(ぞうやく)と寿命を延ばす延命の2つが有名です。普賢菩薩の真言(オン・サンマヤ・サトバン)を唱えると災いを避け、寿命が延びるとされています。
邪気を避ける
普賢菩薩には眷属(けんぞく)という部下がいます。この眷属によるご利益として邪気を退けるとされています。
医療が発達していない時代、病気や悩み事の原因は邪気だと考えられていました。10人の眷属である女神はその邪気を払うとされます。