四国八十八ヶ所お遍路:19番札所 立江寺のお京の黒髪

四国各地に弘法大師の伝説が数多く残されています。中には疑ってしまうような内容の話もありますが、例え話として教訓となるため現在まで語り継がれています。
弘法大師が長い年月を経ても信仰され、語り継がれているのは理由があります。大師はカリスマ性やリーダーシップを持ち、人を引き付ける行動を行っていたからです。
伝説通りの奇跡が本当に起こったかどうかは分かりません。しかし、弘法大師は厳しい修行をして中国で密教を習得し、日本で多くの人を助けたことは事実だと考えられます。そのため人々の感謝の思いから伝説が生まれ語り継がれているのです。
人間の心理や行動の基本的な原則は1000年前も今と変わりません。つまり、日常の悩みを解決するヒントがお遍路を考えることで見えてきます。
実際、お遍路を巡る理由として「自分探し」、「精神の鍛練」といった自己啓発的な理由が多い事にも理解できます。

立江寺 お京の黒髪

四国八十八ヶ所の19番札所、立江寺は徳島県小松島市にある札所です。立江寺は阿波の関所寺と呼ばれ、罪ある人に罰が下る関所だと言われています。これには次のような伝説が関係しています。
昔、現在の島根県浜田市にお京と言う娘がいました。彼女は要助と結婚し夫婦となりました。しかし、しばらく結婚生活が続くとお京はわがままが増え、鍛冶屋長蔵という男と不倫関係になっていました。
さらに、不倫相手である長蔵と計画して夫であるか要助を殺してしまったのです。来世のために長蔵と2人で四国巡拝をしようと決め、立江寺までやってきました。
立江寺のご本尊である地蔵尊を拝もうとした時、お京の黒髪が逆立ち鐘の緒に絡みつけられ苦しみました。そこで、お京は住職に助けを求めました。住職はお京の罪を聞き出し、お京が懺悔すると髪と肉がお京から剥がれて鐘の紐に絡まり、命は助かりました。
これをきっかけにお京と長蔵は出家し、現在のお京塚で生涯にわたって地蔵尊を念じました。また、お京の髪が巻き付いた鐘の緒は肉付鐘の緒として現在も立江寺で見ることができます。

教訓

弘法大師やお遍路にまつわる伝説は、単に弘法大師の超人的なパワーを伝えるのではなく、生きる上でのメッセージが込められているのです。
お京の黒髪の話では、悪いことをすると自分が苦しめられるということが分かります。当たり前のことですが、大切なことです。
悪いことをやってしまったと言う自覚があれば、相手だけでなく自分も苦しめられるのです。多くな悪事であるほど本人に大きく帰ってきます。お京も立江寺で懺悔した後、出家して死ぬまで地蔵尊を念じたのです。
また、自分の心の中で後悔するだけでは済まない事もあります。悪事千里を走ると言いますが、悪い評判が広まり悪い人だというレッテルを張られてしまいます。