負けるほど燃える

前回、「希少性の原理」を紹介しました。これは希少性の高いものに価値があると判断して、手に入れたがるという法則です。今回はこの話の続きです。
希少性の原理には、もう一つポイントがあります。それは、希少性が増える瞬間、より手に入れにくい状況に遭遇した、まさにその時、手に入れたいという欲求が強く働きます。
これを「心理的リアクタンス」と呼びます。リアクタンスとは抵抗や反発と言う意味があり、入手困難になればなるほど欲しいと思ってしまうのです。
別の言葉でいうと、自由な選択が制限されると反発して自由を以前より強く求めるようになります。
あなたにA、B、Cの選択肢があるとします。次にBが取り上げられてしまうと何故かBが欲しくなる心理、これが心理的リアクタンスです。残り物のAやCでは満足できません。
 
子どもにからおもちゃを無理やり取り上げると大泣きするのも、心理的リアクタンスが働いています。取り上げられるともう一度手に入れたくなってしまうのです。また、歴史的に見ても権力者は自分が上り詰めた地位を失いそうになると必死で抵抗します。
勉強しなさいと言われてゲームをする時間を奪われると、めちゃくちゃゲームを続けたい気分になることも同じです。
心理的リアクタンスを恋愛で考えるとロミオとジュリエット効果という現象が当てはまります。親から反対される、会う回数が少ないなど恋人同士の間に何らかの障害があると、想いが強くなる傾向があるというものです。

負けるほど燃える

ギャンブルでの負けは、次にギャンブルに行ける機会を減らすため心理的リアクタンスが働きます。負けると次も行きたくなってしまいます。
財布のお金が減ると、ギャンブルを諦めるのではなく、何としてでも再挑戦したくなります。そのために、生活費を削ったり、借金をしたりという状況に陥ります。
悪い意味で「高い壁を乗り越える」ことにモチベーションが上がっているのです。
一方、スポーツの世界では心理的リアクタンスはプラスの結果に表れることが多いです。練習場所が無い、部員が少ない、費用が少ない、言葉が通じない等、甲子園の優勝校や一流スポーツ選手のエピソードとしてよくあります。

無理やり押さえ込んでも無駄

ギャンブル依存症の人に仕送りをストップしても、心理的リアクタンスが働くため以前よりも賭博場に行くという衝動が強くなる可能性があります。
実際に、精神科医の通院、カウンセリング、自助グループから帰宅すると、再びギャンブルに行ってしまう人がいます。ギャンブルに触れる事が難しくなるほど、反発して行ってしまうのです。
この心理的リアクタンスは人間の遺伝子に昔からプログラムされている性質であるため、抑え込むことは困難です。しかし、人間には理性があります。
自分には心理的リアクタンスが働いているという状況を理解して、動物の本能に従うだけの行動に早く気付く必要があります。すると、別の行動の選択肢が見えてくるようになります。