仏像は仏様の姿を見えるように作られた像です。仏像の種類は様々あり、表情や服装などが異なります。当然、意味やご利益も異なります。仏像の中でも弥勒菩薩(みろくぼさつ)は有名で、京都・広隆寺の宝冠弥勒は国宝に指定されています。
菩薩と名の付く仏様は悟りを開くために修行中の身です。言い換えるとまだ悟りに至っていません。弥勒菩薩もそのうちの一つになります。一方、悟りに至った仏様は○○如来と呼ばれています。
弥勒菩薩のエピソード、仏像の見方、ご利益を順に理解していきましょう。

弥勒菩薩のエピソード

56億7千万年後にこの世にあらわれる
弥勒菩薩は釈迦が亡くなってから、56億7千万年後に悟りを開き、この世にあらわれ人々を救ってくれると約束されています。現世に現れた時は3回の説法を行い、282億人の僧侶に対して法を教えるとされています。
現在の弥勒菩薩はいまだ悟りに至っておらず、その準備段階の状態です。仏教の世界観の中で、兜率天(とそつてん)という世界で弥勒菩薩は修行を続けています。
仏教の考えには六道輪廻というものがあります。六道の世界では煩悩や悩みに苦しめられ、悟りに至らない限り、六道のいずれかの世界に何度も生まれ変わるという考えです。そうならないために、仏道に入りましょうという結論につながります。
その六道における天道の中に兜率天という世界はあります。

 

弘法大師と弥勒菩薩
真言宗の開祖である弘法大師・空海は835年に高野山で入定しました。入定とは、現在も弘法大師が高野山で瞑想を続けているという考えで、死は訪れていないとされています。
その弘法大師は弥勒菩薩のいる兜率天にいるとされ、56億7千万年後に弥勒菩薩とともに現世に再来すると考えられています。
そのため、弥勒菩薩=弘法大師という考えもあります。また、梵字1文字で仏様を表すことがあります。弥勒菩薩と弘法大師を表す梵字は共通の(ユ)です。

弥勒菩薩像の見方

菩薩の特徴
観音菩薩など、他の菩薩と共通する特徴がいくつかあります。
・宝髻(ほうけい)
・きらびやかな服装・装飾品
菩薩グループの仏像には宝髻(ほうけい)という髪の毛を結ってまとめてある髪型が見られます。一方、如来の髪型は螺髪(らほつ)と言ってブツブツしています。
また、菩薩の服装はきらびやかでネックレスのような装飾品を付けています。これは菩薩がまだ悟りに至っていないという設定を表しています。一方、既に悟りに至った如来像は質素な服装をしていることが多いです。
弥勒菩薩の特徴
・右手の頬杖
・立ち上がろうとする様子
弥勒菩薩は右手を頬にそえ、考えている様子で作られていることが多いです。この形は思惟手(しゆいしゅ)と呼ばれています。
前述のとおり、弥勒菩薩は釈迦の死から56億7千万年の間、修行をしています。その間、どのようにして人々を助けようか考えているのです。
また、弥勒菩薩は台座から左足を下ろして、今にも立ち上がりそうな様子で作られていることがあります。これは半跏踏下坐(はんかふみさげざ)と呼ばれています。
弥勒菩薩が修行を終えて、いよいよ人々の救済に向かおうとしているのです。
思惟手と半跏踏下坐の2つの特徴を併せ持つと、弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつはんかしゆいぞう)と呼ばれ、弥勒菩薩の基本的なスタイルの仏像になります。

弥勒菩薩のご利益

再び生まれ変わる
弥勒菩薩を信仰すれば、死後に弥勒のいる兜率天に生まれ変わることができるとされています。そして、弥勒が56億7千万年の修行を終えて人間界に現れるとき、一緒に人間界へ生まれ変わることができます。
仏教の考えでは再び人間界に生まれ変わるには、六道の輪廻を何度も繰り返す必要があります。来世で生まれる世界は誰にも分からないので、辛い地獄界や畜生界を行き来する可能性も出てきます。
そこで弥勒菩薩のいる兜率天という世界に行けば、苦しい思いをせずに再び人間界に生まれ変わることができるとされています。
一方、阿弥陀如来を信仰すれば極楽浄土へ行けるとされています。極楽浄土に行けば人間界など、六道の世界には二度と戻ってこないとされます。極楽浄土で長い修行を積むことで悟りに至るためです。