現代ではバスや車でお遍路をすると10日前後で四国八十八ヵ所をすべて回ることができるようになりました。しかし、中には歩いてすべてを巡る人もいます。歩いてお遍路を巡ると40日~50日かかってしまいますが、あえてスピードを落として時間をかけることにどのような魅力があるのでしょうか?
実際に私も歩き遍路の経験がありますが、交通機関を使わない歩き遍路において最大の醍醐味は何かと聞かれるとお遍路さんと出会って話せることだと答えます。
多くのお遍路さんは四国にある88の札所を順に巡り、御朱印を集めるということを行いますが、それが全てではありません。
お遍路さんは1番札所から2番札所へと歩きますが、「お遍路道」という昔から続くルートを辿るため、歩くペースが同じであれば、おしゃべりをしながら一緒に歩くことができます。
四国ではお遍路さんが歩いている風景は日常ですが、2人組で楽しそうに歩いているお遍路さんが今日初めて出会ってお話ししているようには見えません。しかし、このような状況は私自身何度も経験しました。

 様々な出会い

お遍路さんには様々な人がいます。年齢層に幅があり大学生の若者から60代、70代のお遍路さんがいます。また、日本各地、外国からもお遍路に来ます。歩いていれば、多種多様な人と気軽に話すことができるのです。
平凡な日常を過ごしていれば、会話をする人は限られていることに気づきます。例えば、会社の同僚、家族、恋人です。
しかし、お遍路に歩いていけば日常から離れて新たな出会いや学びを経験することができます。お遍路を歩いて回ろうという人はかなりハイレベルな人が多いため、合コンや飲み屋での出会いとは全く次元の異なる出会いとなります。
年配のお遍路さんと話す
長い人生経験から、どのような思いでお遍路に来たのか聞くことができます。中には深刻な事情を抱えているためプライベートな話を控える方もいますが、雑談でも話の深さに驚くことが多いです。あなたが若ければ若いほど年配お遍路さんとの会話は人生のヒントとなるでしょう。
普通は、様々な苦難を乗り越えてきた貴重な体験を赤の他人に話すことはあり得ません。しかし、お遍路という同じ世界に身を置いている者同士で共感するために話しやすい場の雰囲気ができています。「家族にもこんなことは言わない」と言って過去の経験を私に話してくれた方もいました。
例えば、祖父、祖母が孫に話をする状況をイメージすると孫として扱っているため同じ目線で話すことが難しくなります。身内でない年配の方と同じレベルで話す機会はお遍路が最適だと思います。
若者お遍路さんと話す
大学生、20代お遍路さんはごく少数ですが存在します。彼らは若さというパワーがあり、一緒に話をするだけでも元気になります。
若い世代と話す場合、子供や孫、上司・部下の関係で話すことはあるかと思いますが、同じレベルの目線で話す機会はあるでしょうか?
おそらくそのような機会は少ないと思います。世代の異なる人と友達になってフランクに話せるようになるには相当な時間がかかります。しかし、お遍路では自然と同じレベルでおしゃべりをすることができるのです。
また、若者お遍路さんには是非ともいろいろな話を聞かせてあげてください。若い時期のお遍路の旅は一生の思い出となります。将来の日本を背負う彼らの心にもあなたの知識が受け継がれます。
外国人お遍路さんと話す
最近はクールジャパンの流れで日本の自然や文化を体験しに来る外国人お遍路さんが増えています。日本の有名な観光地ではなく、四国のお遍路というディープスポットに魅力を感じて長期休暇を取って歩き遍路をする外国人がいます。
外国に行かなければ外国人とはおしゃべりできないという考え方は古すぎます。また、外国に旅行に行ったとしても外国人と会話する店員やホテルのフロントでの会話で時間は数分程度でしょう。
外国人と仕事を抜きにした深い話をしたければお遍路でできてしまいます。留学をしなくても四国に来れば国際交流ができるのです。これも国籍が違ってもお互いにお遍路をしているという共通点があるため、同じレベルになって話すことができるからです。
私も実際にマレーシア人のお遍路さんと丸2日間かけて一緒に歩きました。このような経験はマレーシアに行ってもすることができないでしょう。